以前、以下の記事で気象予報士試験の概要をまとめてはいるのですが、あくまで【試験の仕組み・概要】の説明にとどまっているものでした。今回はもう少し踏み込んで実際に気象予報士試験がどんな内容かや学習までに必要な学習時間の目安に関してまとめておきます。
気象予報士試験の仕組み・概要のまとめ記事
合格までの所要時間目安も簡単にこの記事でまとめていますが、受験生の能力や適性、環境によって千差万別のためかなりおおざっぱにしかまとめていません。以下の記事に、サイト管理人そら坊が実際にどれくらいの時間をかけて合格したかまとめた記事へのリンクも載せているので、より具体的に学習時間に関して知りたい方はそちらを参考にしてください。
そら坊が合格までに費やした時間に関してまとめた記事
気象予報士試験の構成
一般・専門・実技の3科目構成
上記に紹介した、試験概要に関する記事にもまとめいているのでここでは割愛しますが、気象予報士試験は【一般知識・専門知識・実技試験】の3科目で構成されています。
そして、その3科目すべてで合格することで気象予報士になることができます。各科目の概要を表でまとめるとこんな感じです。
形式 | 合格基準 | 制限時間 | 補足 | |
学科一般 | マークシート | 15問中11問正答※ | 60分 | ※各回の平均点により合格必要点 の変動有 |
学科専門 | マークシート | 15問中11問正答※ | 60分 | ※各回の平均点により合格必要点の変動有 |
実技1 | 論述や作図有の総合型 | 70%以上の得点※ | 75分 | ※実技は学科両科目合格の受験者のみ採点 |
実技2 | 論述や作図有の総合型 | 70%以上の得点※ | 75分 | 合格基準は平均点による調整・変動有 |
更に気象予報士試験には、知っておかなければいけない厄介な仕組み・注意点があるのでそこだけまとめておきます。
1度で3科目合格する必要はない
まず上記で【3科目すべて合格で気象予報士】とまとめていますが、1度にすべて合格する必要は実はありません。
なぜなら【学科試験合格者には受験免除資格】が与えられるからです。
既に学科試験合格済みの受験生は、再度受験しなおす必要はありませんよ。という救済措置ですね。ただし、この免除期間は【直近の合格から1年間のみ】となっています。その免除期間中に全科目合格が果たせなければ、免除期間の有効期限が切れ、再度受験しなおさなければいけません。
実技試験採点対象は学科合格者のみ
次に実技試験に関してです。
なんと実技試験は【一般知識・専門知識の両科目合格者のみしか採点対象】になりません。
しかも、実技試験には学科試験のような【合格による受験免除期間】等はありません。
そのため、いくら実技試験で高得点が取れても【学科試験が不合格】であれば、そもそも採点すらしてもらえません。
つまり、【実技試験を採点してもらえ、かつ実技試験で合格点を越えた時】が【気象予報士試験に合格した時】と同じことになります。言葉だけでは理解しにくいので後ほど実技試験を採点してもらえる場合、もらえない場合を表にまとめておきます。一旦次にいきます。
学科試験【一般知識・専門知識】の特徴
学科試験に分類される【一般知識・専門知識】の試験の特徴をもう少し詳しくまとめるとこんな感じです。
学科試験の特徴
- 試験時間はそれぞれ60分。問題数15問。問題はすべてマークシート、基本5択。
- 11点以上で合格。平均点によっては合格基準点の引き下げや引き上げがあり、ボーダーが10点や12点になることも。
- 合格した場合、その科目のみ合格から1年間【受験免除資格】をゲット
- 一般のみ合格→その先1年間は一般知識のみ受験なしで合格扱い。専門知識及び実技は受験が必要。
- 専門のみ合格→その先1年間は専門知識のみ受験なしで合格扱い。一般知識及び実技は受験が必要。
- 一般・専門両方合格→その先1年間は両科目とも受験必要なし。その期間に実技試験に合格してしまえば晴れて気象予報士。
- 一般・専門両方不合格→なんの免除も得られず。次回も一般知識・専門知識・実技の3科目の受験が必要。
- 免除期間から1年経っても完全合格できなかった場合、免除期間は失われ再受験が必要に。
- それぞれ試験は独立しているので、まずは一般知識or専門知識のどちらかだけ合格を目指すなどもあり。
- ただし、免除なしの場合はどちらかのみだけ受験するコースなどはないので、受験費用は変わらない。免除科目がある場合に限り受験費用がほんの少しだけ割引される。
- 気象業務に関する業務経歴がある場合、「学科試験が全部or一部免除」される場合もある。
- ほとんどの受験生は対象外だと思いますが、現在予報業務に従事している方などは要チェック。
ざっとこんな感じです。各試験の中身がどんな感じかに関しては中盤で纏めます。
実技試験の特徴
そして実技試験の特徴をもう少し詳しくまとめるとこんな感じです。
実技試験の特徴
- 同じ日程で実技Ⅰと実技Ⅱの2回の実技試験を受ける。
- 実技試験は基本昼過ぎからの開催。午前中に学科試験が行われている。
- もし朝イチの一般知識試験から受ける人は、1日で4回のペーパーテスト【一般・専門・実技Ⅰ・実技Ⅱ】を受けることに。
- 実技Ⅰ・Ⅱともに形式は同じ。それぞれ100点満点で制限時間もそれぞれ75分。
- とある日の実際の天気が抜粋され、そうなった原因や今後どうなりそうか、防災上の留意点などが問われる。
- 実技Ⅰ・Ⅱで特に難易度差や内容の違いはない。
- 試験内容は【記述・作図・文章穴埋め・計算】など総合的に出題される。
- 「実技」というと【実際に人前で天気予報をする】イメージだがそうではなく、あくまでペーパーテスト。
- 実技Ⅰ・Ⅱの合計得点が70%以上で合格。なので、200点満点中140点が合格の目安。
- 平均点によっては合格基準点の引き下げや引き上げがありボーダーが60%代になることもしばしば
- 例えば「実技Ⅰは40点しか取れなくて、実技Ⅱが100点満点取れた」というような極端なケースで合格できるかは不明。
- 学科試験【一般・専門】が両科目合格していない場合、そもそも採点されない。
- 同じ回の受験で【一般・専門】の両科目が合格に達している状態であれば採点されます。
- 初回受験で何の免除もなくても【一般・専門】がともに合格点に達し、同時に【実技も合格基準点以上】が取れれば「一発ストレート合格」は可能。
- 実技試験に【一部合格による受験免除資格】はなし。
- 「実技Ⅰだけ合格基準を超えたから、次回は免除」なんてことはないです。
- 実技も試験はⅠ・Ⅱの2つに分かれてはいますが、あくまで合計点でみられるようです。
こんな感じです。次に各試験の学習の中身とイメージに関してまとめます。
合格基準点の変動に関して
各回ごとに平均点が異なるため、合格基準点が前後します。
各回ごとの合格基準点の変動をまとめた記事もあるので気になる方はブックマークしてきましょう。
各回の合格基準点の変動推移
気象予報士試験の学習内容とイメージ
で、結局気象予報士試験ではどんなことを学ぶのか?という点です。試験全体を通してイメージを掴んでもらえれば幸いです。
天気予報がどのように作られ運用されるかを学ぶ試験
全受験生は、気象予報士試験を通して【気象予報がどのような原理】で【どのように作られ】、そして【運用されているか/役立てられているか】を学ぶと考えてください。
そら坊は、特に初学者の受講生の方などに向けて、これらを「カレーの作り方」でよく例えています。
【一般知識試験】気象予報の根幹となる理系学問や気象予報を扱う法律などの【素材】の学習
美味しいカレーを作るには【各食材の特徴】を学ぶ必要があります。それが【一般知識】
ジャガイモは加熱するととろみが出るとかにんじんは甘くなるとかですね。
【専門知識試験】どんな技術をどのように活用し気象予報を生み出すかの【調理法】の学習
【調理法と調理器具次第】でいろんなカレーが作れます。その【調理方法】全般を学ぶのが【専門知識】
無水カレーなのかスープカレーなのか、レシピも違えば使う器具も異なります。
【実技試験】実際に出来上がった気象予報をどのように使いどんな結果が得られるか?の【製品化】の学習
出来上がったカレーの味を元にカレーライスとパンどちらにするか?など活かし方を学ぶのが【実技試験】
完成品の味は?米とパンどちらに合う?改良するにはどうすればいいか?などですね。
ざっくり、こんな感じだと参考にしてください。各科目をもう少し深堀りすると以下のような感じです。
学科:一般知識
学習内容概要
一般知識試験で学ぶこと概要
- 気象現象が発生している舞台、【地球や地球の大気、他の天体(主に太陽)】のこと。
- 飛行機で【成層圏に~】とか聞いたことありますよね。成層圏は地球大気を高度で区分した時の一つです。
- 台風の発生原因の一つが【地球の自転】だったりします。地球の持つ力や影響なんてことも学びます。
- 気象学の根幹となる【物理学・熱力学・地学】などの理系分野全般
- たくさんの数式が出てきます。初学者や文系受験生の鬼門になるところですね。
- 耳馴染みのある用語だと【飽和】【遠心力】【エネルギー保存則】とかも出てきますが、基本的にはじめましての用語が多いと思います。
- 三角関数とかも随所に出てきます。
- 雨がどのように生まれるか・雲の種類・風の種類
- ちょっと天気っぽいことももちろん学びます。が、これらを知るために一つ上に書いた理系分野を理解する必要があります。
- 気象業務に関する法律
- 天気予報は、国民に多大な影響を与える業務なので、それらを健全に運用するための法律を学びます。
- 15問中4問は法律分野から出るので、得点源にしやすい単元です。
など…
ざっくり分類するとこんな感じ。大多数のイメージする【天気の勉強】とは異なる学習に面食らう受験生も多いです。
一般知識試験合格までの学習期間目安
最低でも3ヶ月、時間にして200~300時間ぐらいは少なくても必要だと思います。
あくまで最低限で且つ目安です。これより多くかかる方も決して珍しくないと思います。
学科:専門知識
学習内容概要
専門知識試験で学ぶこと概要
- 気象データを得るための【観測の方法】や【観測機器】に関して
- 温度計・雨量計など、各種気象測器の構造や、設置のルールに関して細かく暗記が必要です。
- 【気象現象】や【気象観測】の【定義】や【ルール】に関して
- 例えば『雨』という言葉で全員が同じ現象をイメージするために『雨』の定義を決めなくてはいけません。
- 他には、天気記号や雲記号など、記号も学びます。地図記号と似たような感じです。
- 【気象レーダー】や【気象衛星】などがどんな原理で運用され気象予報に活用されているか
- 最新鋭の技術に関してもたくさん学びます。難しいです。
- 【天気図】や【衛星画像】の見方も一緒に学んでいきます。
- 集めたデータをどのように使い・どんな仕組みで天気予報を生み出していくか?
- 専門的には「数値予報」と呼ばれます。とっても難しいです。複雑な計算式がたくさんです。
- 予報の手法も色々あります。「何を予想したいか?」で使い分けないといけません。
- 数値予報はあくまで「計算結果の数値」なので、人に伝わるように言語化していきます。その方法も学びます。
- 生み出した天気予報の完成度はどうか?の確認や評価
- 生み出された天気予報が、どれだけ正しいものか?などを判定し、改良していく必要もあります。その判定方法も学びま
- 防災・災害に関して
- 最も大事な所です。気象災害による被害を最小限に食い止めるために、どんなシステムや仕組みが運用されているか?
- ニュースでよく聞く「警報・注意報」などに関しても学びます。
- 各気象現象や気圧配置の特徴
- 台風・温帯低気圧・積乱雲・梅雨前線・西高東低などなど…天気っぽいこともきちんと学びます。
- エルニーニョ現象や北極振動など、日本にとどまらず、地球規模で学ぶ内容もあります。
など…
ざっくり分類するとこんな感じ。一般知識よりも【技術的・システム的】な学習になります。
専門知識試験合格までの学習期間目安
これも一般知識と同じで、最低でも3ヶ月、時間にして200~300時間ぐらいは少なくても必要だと思います。
あくまで最低限で且つ目安です。これより多くかかる方も決して珍しくないと思います。
実技試験
学習内容概要
実技試験で学ぶこと
- これまでの総合学習です。学んだこと全部使います。
- とある気象現象に着目し、【その現象が発生した原因、今後どうなるかの予測、その現象における防災上の留意点】などを答えさせる問題が多いです。
- 一般知識の【法律分野】など出題されない分野も多少ありますが【学科知識は習得して当然】というスタンスで問題が作られているので、【学科試験内容】がしっかり理解できていないと解けません。
- 更に【気象学特有の文章表現】や【各種作図】・【前線の解析】なども行います。
- 記述問題・作図問題・計算問題など幅広く出題されるので、各種回答スキルを身につけなければいけません。
実技試験合格までの学習期間目安
実技はかなり大変です。合格相当の実力を身に着けるだけでも最低でも6ヶ月、時間にして400~600時間ぐらいは少なくても必要だと思います。
特に実技試験は【学科試験両科目合格】していないといけません。
一度は学科試験に合格しても、その免除期間中に実技試験の合格を果たせず、改めて学科試験を受け直すことになる受験生なども多く、最終的に完全合格を果たすために、それ以上の時間がかかる受験生も珍しくありません。
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本記事は以上となります。各試験に関してより具体的な内容を知りたい方は関連記事をまとめておくのでチェックしてみてください。
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