時間が足りない・解き終わらない気象予報士実技試験
実技試験は75分では到底完答不可能な量の問題が出題される。
僕もそうだったが、2度目の実技試験チャレンジとなった第53回実技2の試験で、最後の大問の半分は時間不足で満足に回答できなかった。おそらく8点分ほどは未回答のまま空白で提出している。
にもかかわらず合格できた。
他のブログやSNS等でも完答できずに提出し、合格している受験生をたまに見かける。
恐らく、しっかり準備した受験生も半数以上は完答できておらず、その中でも回答できている部分の精度が高い受験生は合格できているのだと思われる。
とはいえ、完答できるに越したことはない。
実技試験を制限時間内に完答できるかどうかが、まず実技試験合否の一つの別れ目となる。
合格者を三パターンに分類すると
【完答し精度高い・完答したが精度そこそこ・未完答だが回答部分の精度高い】
となるはずだ。
基本的には75分の制限時間内にしっかり解き終わるだけの実力をつけ。準備ができている受験生であれば、万一本番で時間不足に見舞われても、精度の高さで補うことができる。
特に実技試験の難易度は調整がむずかしいようで、回によって非常にばらつきがあるため、平均的な難易度の問題であれば完答できる受験生も問題の難易度や問題との相性によって完答できないケースも往々にしてあるのだ。
過去問対策で、解いた事例の7割程度は時間内に完答でき合格点が取れているor時間不足となっても回答できている部分の点数で合格基準点が取れる受験生は、理解度は問題ないので、さらに回答スピードを伸ばせるように特訓しよう。
どの事例でも時間内に解き終わることのできない受験生は、そもそもの精度・理解度・対策が不十分であるので、丁寧に解いた事例の復習・見直しを行い、知識不足と理解不足を補強していこう。
時間内に完答するために必要な8つの要素と対策方法
では、実技試験を時間内に解き切るために必要な要素・エッセンスをまとめる。
各要素をしっかり特訓して受験に臨んでほしい。
8要素概要
実技の構成は【穴埋め・記号選択】【記述】【作図】【計算】の4要素
実技試験での出題形式4種=前半4要素
実は実技試験の出題形式は【穴埋め・記号選択】【記述】【作図】【計算】の4要素から成り立っている。このページではこの4要素の対策に関してまとめていく。後半の4要素は【試験的なテクニック】なので次回のページでまとめる。
要素1【穴埋め・記号選択】~満点めざしてとことん詰め込む~
実技試験で最も配点が低く・最も点が確実に取れる出題形式で、1問1点のシンプルな知識・用語・単語をこたえる問題がほとんどである。各回ごとに合計20~25点ほどの比重で出題される。ここで重要な点は2つだけ。
時間をかけない
確実に得点する
ただ知識を詰め込むだけで点が取れる非常にありがたい出題形式であり、少なくともこの純粋な暗記問題であればできれば9割少なくても8割は得点できないと合格はむずかしい。
さらに回答スピードとしては1問当たり10~20秒の早さで回答できなければ、ほかの記述問題等の回答時間が間違いなく不足する。
時間に追われている中、如何に正確に問題文と図表を読み取り、正しい単語・記号・数値を解答できるか。暗記の精度とアウトプットのスピードを両立させるための反復練習が欠かせない。
ただ、幸いなことに穴埋め問題の半分以上はほぼ毎回テンプレートで決まっているので対策は比較的容易だ。(過去1,2回だけ例外があったようだが。)
一つは日本の天気図を解説した文中にある穴埋めを語句欄から選択していく形式であり、毎回15点前後の配点となっている。
他には
- アメダス等の風向・風速・気温・降水量などの気象観測データの図表・グラフをもとにしたもの
- 台風や大雪、高波などの気象災害における、被害や留意事項、警報等などをテーマにしたもの
- 天気予報ガイダンスや天気予報文などをテーマにしたもの
などがあるがどれも本質はかわらない。
正確に暗記し、精度を落とさずにスピーディーにアウトプットできるように特訓を反復しよう。
ここで如何に短時間で正確に得点できるかが最初の合否の分かれ目である。
要素2【記述】問題対策~論述のイロハ・コツ・センスを磨く~
実技試験が国語の試験と比喩されることがあるのは、この記述問題のせいである。各回の試験で平均30~40字ぐらいの記述問題を10問前後出題され、合計300~400字記述を求められる。さらに問題分の出題意図を正確に見抜き、各図表から判読できる気象情報のどこにどう着目するかを指示された文字数で過不足なく的確に記述しなければいけない。
配点も平均4点だとして40~50点前後とかなりのウエイトを占めてくる、合否に直結する重大要素となってくる。
戦略としては
【部分点で7~8割の得点率を目指す。】
というのが一つの目安になるだろう。合格基準点が70%なので記述問題で満点を狙って文章を推敲・記述内容を吟味して時間不足になってしまうより、論述の要点・的を外さず、時間も節約しながら最短の時間で最大の得点を目指す方法が賢く確実だ。
ただし、本番では間違いなく1点も取れない記述問題に出くわしたり、論述の的がずれた回答をして部分点すらほとんどもらえず0点や1点となる問題もでてくるので、記述問題のうち2~3問は完答し満点をもらえなければ7~8割という得点率はかなり難しいので気を抜いてはいけない。
更に部分点を確実にもぎ取るために
気象業務業界特有の言い回し・表現に慣れる。覚える。
必要があるので飽きるほど過去問対策に取り組んでほしい。
記述問題対策に関しては内容が濃すぎるので、また別の記事にしっかりまとめるのでおまちください。
要素3【作図】問題対策~作図のバリエーションを押さえる~
等圧線作図、構想天気図上へジェット気流描画、前線描画、各種擾乱やトラフの今後の推移・移動に関して等様々なパターンの作図問題が各回3~4問出題される、点数配分は合計で10~15点ほど。
過去問対策で出題パターンやバリエーションを把握し、スピーディーに作図できるように反復して対策がひつようである。
実は作図問題は、時間がかかる割に配点の比重はそこまで高くないこともある。また、作図のために与えられた情報のみでは【正確に描写できる範囲】と【データ不足で正確な描写がむずかしい範囲】などもあったりする。
所要時間と配点をしっかりイメージし、正確な作図と大まかな作図のバランス
を誤らないことが大切だ。
作図問題では、与えられたデータに対応した作図がしっかりできていれば、データが不十分な範囲・与えられていない範囲は多少おおまかでも物理学的に・気象学的に矛盾がなければきちんと点はもらえるようになっている。
あまり神経質になりすぎずに、問題文とデータから出題者が正確に作図してほしがってる部分がどこかを寄進と見極め、短い時間で点の取れる作図ができるように特訓しよう。
要素4【計算】問題対策~意外と少ない計算問題~
理系最難関試験であるが、実は問題文から式を作り数値を求めるといった、純粋な計算問題は少ない。各回1~2問ほどのみで配点も合計4~6点ぐらいである。
ただし、擾乱の移動速度や距離、時間の計算や大気の厚さや高低差による気温・温位変化、降水量と降雪量から雪水比の計算などなど、【計算が絡んでくる】問題がさらに2~3問ほどあるので、実質全体の10~15点ほどは計算問題が占めているといってもよいだろう。
純粋な計算問題は、受験生に簡単に解かれてしまわないように難しくされている…
ように見えて実はそこまで難しい計算じゃなかったりする。
特にここ最近の試験では、見慣れない用語や単語を問題文に取り入れ難解な文章に見せかけているが、しっかり問題文を読めば大して難しい式や計算は不要な単純な掛け算・割り算だった。みたいな出題傾向である。
とはいっても時間に追われた本番中に、計算問題1問のためにじっくり問題文を読み丁寧に計算する余裕などほとんどない。
計算問題も図形問題同様に、計算に使える時間と、計算問題でgetできる得点とのバランスをしっかり天秤にかけて落ち着いて取り組むことが必要だ。特に、気象予報士試験の計算問題は計算結果だけを【答え】として記入することも多く、立てた式や考え方があっていても計算ミスで数値や単位、桁を間違えてしまえば0点で部分点ももらえないことも多い。計算問題での得点を得点源として狙うのであれば、スピーディーにミスのない計算ができるように日ごろから訓練しておこう。
計算が絡んでくる問題も要注意だ。途中経過まではばっちりだったのに、最後の最後で気を抜いてしまって、足し算と引き算を誤ってしまったり、単位の変換を忘れてしまったりということは焦っている本番ではよくある。僕も本番で同様のミスをした。
日々の実践対策のときから、計算問題が出てきたときは解説文を読むだけではなくきちんと自分の手と頭で計算を行う癖をつけて、計算になれておこう。
また、計算問題を解くための最低限の理数系の知識もきちんと覚えておいたほうがいい。重力加速度≒9.806 m / s2や水の分子量=18.01など、問題文で注釈をしてくれていることもあるが、必ず注釈がつくとは限らないので、覚えておこう。
4要素で自分なりの必勝バランス・必勝法を見つける。
以上が出題形式4要素のまとめと対策・特訓の肝だ。
まずは実践対策と復習の中で、この4つの出題形式にすべてに対応できるように訓練を繰り返す。
そして、自分なりの必勝パターン・得点バランスを見つけられるのが理想だ。
自身の適性や得手不得手、正確に合わせて、時間内に合格点をより確実に取るためにどこを重点的に学習するか、本番はどの問題にどの程度時間を使うか、自分なりの合格の方程式をみつけると合格がより近づく。
ちなみに僕は暗記に自信があり、計算や理系知識に自信がなかったので、理系知識を養う時間と正確でスピーディーな計算力を身に着けることに時間を費やしても、得点につながるか疑問だったので、計算問題の対策は最低限にする代わりに別の対策に時間をかけ、穴埋めや記号選択、作図で9割をキープする・計算問題はすぐに計算式が浮かぶものは解くが1~2分で式が立てれなければ一旦飛ばすという戦略で本番に臨んだ。
本番はすべてを完璧にこなそうとすると絶対に時間が足りなくなるし、余裕もなくなる。自分の中で捨ててもいい問題と得点をしたい問題を明確に定めておくことで、試験内容や難易度に限らず安定して合格点を取れるようになるはずだ。
復習では満点を目指して学習し、本番では満点ではなく合格点を目指して戦おう。
ここまでは試験範囲の学習対策である。ここまでステップを踏めた読者は、問題によっては合格点を取れるようになってきていると思う。しかしまだ、問題の相性や難易度によっては不安定だったり、【あと10分あれば…】といった状況だと思う。
後半の4要素では、試験範囲の学習ではなく、その【あと10分】を捻出する【試験テクニック】の解説になる。実技試験合格をより確実なものにするために、是非後半の記事も読んでみてほしい。
後半はこちら。実技試験合格・完答に必要な8要素と対策の全て【後半】