大問3からの続きです。
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大問4~エマグラム再び~
終盤の問題の傾向
近年の問題終盤では、各地の降水量や降雪量、気温や風向・風速など各地の気象観測結果のより細かい時間変化と推移のデータを使用させる出題が多いです。よく棒グラフや折れ線グラフ等が図表として出てきます。
特に、問題序盤や中盤に絡んできた擾乱の【初期時刻からの推移や移動】【予想と実況の違い】【全休モデルとメソモデルの予報の違い】などをその観測結果から導いて回答するような問題や、その観測結果が【気象警報・注意報発令基準に達するかどうか】などの出題がかなりの割合を占めています。
今回もそんな感じになりそうです、ではいきましょう。
まずは問題文を貼りますね。
(1)①館野の気温の鉛直分布に関して
まずは図10を見てみましょう。
☆またまたエマグラムです。
しかも、図5で一度出てきた館野のエマグラムが再度でてきています。
ただし、今回のエマグラムは1/29の21時とのことで
図5で出てきた12時間後のエマグラム
となっています。
きちんと図5との関わりを意識しましょう。
- 最も高い高度にある逆転層の上端の高度。
- 50m刻みで回答。
- 1の高度の気温を1℃刻みで回答。
- 1よりも下の高度で気温が最も低い高度。
- 50m刻みで回答。
- 3の高度の気温を1℃刻みで回答。
左が回答しなければならない事項です。
長い問題文を読むのがおっくうになるのも、試験終盤で時間に追われてる気持ちも分かりますが、問題文が長い時ほど冷静に脳内で整理・処理しましょう。
問題文の最後に見落とせない注釈もありますね。
hPaからmへの変換
逆転層の高度を求めるのは簡単ですが、今回は高度を
【hPaではなくmで】
という注釈があります。
単位の変換は冷静に考えるとむずかしくないのですが、試験中はどうもてこずってしまいます、過去問演習で単位変換の問題が出てきたときは、本番で慌てずに解答できるように何度も復習しましょう。
単位変換の出題に関しては、毎回ほぼ注釈を入れてくれているのが気象予報士試験の特徴です。
今回の注釈は
850hPaあたりの高度を1500m
1hPaあたりに対し10m
です。
回答の流れは
逆転層の高度をhPaで求める。
850hPaからの高度差をhPaで求める。
高度差1hPaあたりを10mに置き換える。
です、簡単ですね。
気温は縦軸をたどって数値を読み解くだけなので簡単です。
ということで回答は
- 最も高い高度にある逆転層の上端の高度。
- 790hPa(図10太赤線)➡850hPaと60hPa差➡60×10m=600m差➡1500mに高度600mを足す➡2100m
- 1の高度の気温を1℃刻みで回答。
- 1℃(図10の黄色縦線)
- 1よりも下の高度で気温が最も低い高度。
- 870hPa(図10細赤線)➡850hPaと20hPa差➡20×10m=200m差➡1500mに高度200mを引く➡1300m
- 3の高度の気温を1℃刻みで回答。
- -3℃(図10水色縦線)
2つの要チェックポイント
この問題の復習の際に抑えてほしいポイントはここです。
1hPa≒10m
計算ミス0
1hPaは大気の厚さの差をmに換算すると約10mとなります。海面だと1hPaあたり1㎝となります。
もちろん大気の状態や高度にもよりますので、≒としていますが、気象予報士試験ではいったんこれで覚えておいて大丈夫です。
そして、計算ミスがないように心がけましょう。
hPa⇔mの変換の時は特に足し引きのミスが多いです。
1hPa増加する=高度が10m低下
です。hPaは高度が上昇すればするほど低下していきます。当たり前ですがここで足し引きのミスが生まれやすいです、計算の際はかならず見直ししましょう。
計算元の高度と計算後の高度をきちんと見比べて、足し引きが正しいかをきちんと確認しましょう。
(1)②初期時刻からの気温の時間変化
2つの高度における初期時刻からの時間変化を記述する問題です。
図5で出てきた館野の9時のエマグラムと図10の館野の21時のエマグラムを見比べていきます。
図5と図10を並べてみました。
あらためて②の問題文を貼ります。
1:790hPa付近の高度に関しての気温変化
2:850hPa以下の高度の気温変化
二つに着目します。
1はほとんど差はないのに対し、2は12時間で気温が全体的に下がっています。
これを45字で記述しましょう。
ということで問4(1)①②の模範解答は以下です。
計算ミスがなければ満点を狙える問題ですね。14点中10点はとりたいですね。
次行きましょう。
(2)ブライトバンドに関して
残りの問題文を掲載します。
図11を見ながら解いていきます。
14~21時において受信強度が上下の層よりも強いところをブライトバンドと呼びます。
受信強度は暖色であればあるほど強いことを意味します。上下の層よりも受信強度が強い=暖色成分が強い層を青線枠で示しています。
上空2.4kmがブライトバンドです。
そしてブライトバンドの特徴ですが、これは知識問題ですね。
雪片が気温0℃近くの融解層を通過する際に、雪片の表面のみ溶けている状態の降水粒子をレーダーがとらえると受信強度を実際よりも大きく見積もってしまいこの現象が発生します。それを0℃という気温に触れて記述してあげるだけです。次行きましょう。
(3)凍雨の観測に伴う風向変化に着目
凍雨って名前初めてしりました。
一つ知識を追加しましょう!!
ブライトバンドで表面だけ溶けた雪片の外側と内側が逆になった感じかな?
中だけ液体で表面は凍ってる。みたいな。
調べたい人はチェックしてみましょうね、僕は今のところこれぐらい知っておければいいので割愛します(笑)
ただせっかくなので一つ押さえておいてほしいことがあります。それは
☆気象予報士試験では初見の知識や用語が絶対出る。
ということです。
受験生レベルだと知らない用語や単語、概念は必ずどこかで出てくると思っておいてください。
でも、きちんと注釈をしてくれているし、それ自体を知らなくても試験レベルの気象学がきちんと身についていれば理解できるような解説と出題の仕方をしてくれているので慌てる必要はないです。
試験で、見知らぬ用語や概念が出てきても冷静に対処できるように【知らないことが必ず出題される。】と覚悟をもって日々の過去問演習に取り組みましょう。
それができれば、覚悟せずに挑んだほかの受験生に差をつけることができます!!
では問題の内容に入りましょう。
改めて問題文で指定された図11の全容を貼りますね。
図11にも(3)の問題文の抜粋を書いていますが、12時~15字に凍雨が観測されたとのことで、大気下層の気温低下に関わる風向の時間変化を高度を示して記述する問題でした。
大気下層は地上から~3kmぐらいまでのことですね。
この高度付近で気温低下に関わりそうな風向変化がないか着目していきます。
下に図11のズーム画像を載せます。
ということでズームするとこんな感じです。
基本的に地上から高度3.8kmほどのほとんどの層で、この3時間の間に風向変化自体顕著なものは見当たらないですね。
が、高度0.9kmと1.2km付近で、時間経過に伴う風向変化が見られますね。
どちらの層も反時計回りに回転していますね。
1時間おきの矢羽根データを黒ペンでなぞっています。
どちらの層も最終的に風向が北よりになっていますね。
ここを述べてあげましょう。
ここで改めて問題文を見てみます。(4)の問題文も次で使うのでまとめて載せますね。
40字程度という字数指定と高度を示せという指定があります。
40字の字数指定だと1つの高度に言及するだけでは文字数が不足します。仮に1つの高度のみで述べると
【高度○○kmで風向が東から北に反時計回りに変化している。】
となり、28字ぐらいにしかなりません。
40字指定であれば9割の35字ほどは少なくても欲しいです。
たとえば字数を稼ぐために【風速が強くなっている】なんてのを足したとしても
問題文には風速に関する言及をしろ
なんて指定は一切ないので、風速に関して述べても加点はないですし、風速に関する事実が誤りであればむしろ減点になります。
なので、今回のケースでは1つの高度に関して述べるだけでは不十分だということがわかります。
※もちろん、1つの高度に関してだけ述べてそれがあっていれば部分点はもらえます。
ということで、今回はこの0.9kmと1.2km両方の風向変化を言及できて満点という問題ですね。
【高度0.9kmでは東風が北東風に、高度1.2kmでは南風が東北東風に変化している。】
これで42字です。こんな感じじゃないでしょうか。
このまま(4)に行きますね。
(4)長野の15~24時の雪水比
雪水比でましたね。
問題文にも書きましたが雪水比は
雪÷水➡雪が上・雨が下
ですよ。机の上にある雪だるまが溶けて机の下に水が滴るイメージで覚えましょう。
下手ですがイラストにしてみました。
ということで雪水比に関してチェックしたところで問題に入りましょう。
図12(下)を見てみます。
ということで長野の降水量・降雪量の時系列図です。
指定では29日の15時~24時の雪水比なので、単純に降雪量と降水量を足して割り算しちゃいましょう。
※目盛りの読み間違え注意
ということで、図12に書いているように
10㎝÷11.5㎜=0.869…≒0.9が正解ですね。
(5)水戸の降水量と積雪に関して
まずは問題文を貼ります。一気に行きましょう。
(5)①T=0➡T=12とT=12➡T=24で予想される最大降水量
図7の予想天気図を用いて、水戸の12時間予想降水量の最大を求める問題です。
図7を貼りましょう。
上がT=12の予想図。したがT=24の予想図ですね。
T=12の予想図では
【T=0から12時間後までの12時間で降るであろう降水量】を破線で表してくれているので、水戸がどの破線領域に属しているかを読み取るだけでよい問題です。
T=24の予想図では、12時間の起点がT=0ではなくT=12からの12時間になっただけであとは同じなので、上下の図でそれぞれ同じ作業をすればよいだけです。
ちょっと読み取りにくいですが、色分けしているのでクリックして図を拡大してみてください。
ちょっと大きめの図にしますね、操作しにくかったらすみません。
ということで
前半12時間は最大降水量20mm
後半12時間も最大降水量20mm
の予想ですね。
(5)②雪水比から水戸の降雪量を逆算
(4)で長野の雪水比を求めた問題の逆バージョンですね。
雪水比が与えられ、与えられた雪水比と観測された降水量を使って、降雪量を求めるという流れになります。
図12の水戸の降水量を見てみましょう。
これは28日0時~29日24時の降水量です。困ったことに30日の降水量データはありません。
そこで①で求めた最大降水量予想を使うということですね。
29日21時~30日9時の12時間降水量予想は20mmでした。
その20㎜から、図12で求められる29日21時~24時の3時間の降水量を差し引くことで指定された
30日0時~30日9時の降水量を割り出し、与えられた雪水比を使って降雪量を計算するというフローです。
単純な雪水比の計算にくらべるとひねりのある問題となっていますね、残り時間の気になる試験終盤で出すには非常にいじわるな問題です(笑)
問題文に書いていますが、29日21時~24時は5mmの降水が観測され、29日21時~30日9時までの12時間予想降水量は20㎜となっています。
なので、30日0時~9時の降水量は15㎜とし、雪水比0.7を元に降雪量を求めると…
0.7=降雪量÷15㎜➡降雪量=0.7×15➡降雪量=10.5➡四捨五入して11㎝。
ですね。
(5)③水戸で大雪警報・注意報が出るかどうか
最後はこれまでの問題を解けた受験生へのサービス・ボーナス問題ですね。
②で求めた時間帯に②で求めた降雪量が予想される場合に、大雪警報や注意報が出るかどうかの問題です。
②で降雪量は11㎝が予想されています。
問題文では10㎝を越えると大雪警報の基準を上回ると書いていますね。
そのまま大雪警報が正解です。
これまでの問題が解けていれば簡単ですが、解けていない人は正解できないという、とてもよくできた問題ですね。
あてずっぽうで大雪警報とだけ書いたとしても、②が正解でなければよくて部分点しかもらえないでしょう。1点ももらえない可能性もありますね。
②が不正解でも10㎝を越える値を記入していた場合はわかりません…その場合も部分点でしょうね。
ということで残りの模範解答は以下。
やっと実技1が全部終わりました…
大変だー
是非復習に活用くださいね。