令和6年4月24日から【熱中症警戒アラート】等の運用が開始となりました。
その概要と気象予報士試験に影響がありそうかもまとめていきます。
では見ていきましょう。
熱中症警戒アラート(熱中症警戒情報)/熱中症特別警戒アラート(熱中症特別警戒アラート)概要
名称
まず正式な名称は【熱中症警戒アラート(熱中症警戒情報)】【熱中症特別警戒アラート(熱中症特別警戒情報)】となっています。
後者の【特別】が付く方が【より危険度の高い状況】を表しています。
なお、【警戒アラート】でも【警戒情報】でもどちらでも同じようです、公衆に対しては【アラート】という注意喚起しやすい表現を用いてるのだと思われます。【特別警戒アラート】と【特別警戒情報】に関しても同様です。
・もちろん【特別】とつかない通常の【警戒アラート/警戒情報】でも十分危険な状態であるため警戒を怠ってはいけません。
・「警報」・「特別警報」とは別物です。混同しないようにしましょう。
運用の目的
気象庁の報道発表資料には以下の様に記載があります。
熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される場合に、暑さへの「気づき」を呼びかけ、国民の熱中症予防行動を効果的に促す…
気象庁【令和6年度「熱中症警戒アラート」の運用開始について】より:https://www.jma.go.jp/jma/press/2404/16a/20240416_press_heatalert.html
名前の通り「国民の熱中症への警戒」を促すために運用が開始されたようです。
【熱中症特別警戒アラート】は2024年から開始
【熱中症警戒アラート】は以前から運用されていましたが【熱中症特別警戒アラート】は2024年から開始される新たな情報となります。
【過去に例のない広域的な危険な暑さを想定】して運用が開始されました。
運用はどこが行う?
熱中症警戒アラートは【気象庁】と【環境省】共同で!
まず【熱中症警戒アラート】の運用は【気象庁】と【環境省】が共同で行うとのことです。
環境省のHPでも【熱中症予防情報サイト】というページが確認できます。
ちなみに【気象庁】の管轄は【環境省】ではなく【国土交通省】となります、誤解しないようにしておきましょう。
熱中症特別警戒アラートは【環境省】単独!(気象庁も注意喚起は行う)
次に【熱中症特別警戒アラート】の運用は【環境省】が単独で行うようです。
ただし【気象庁】も【高温となる気象状況と見通しを伝えるため全般気象情報等により暑さに対する注意喚起を行う】とのことです。
運用の期間
どちらのアラートも運用の期間は【令和6年(2024年)4月24日㈬】~【同年10月23日㈬】までとなっています。
当然ですが熱中症の危険度の高い【気温や湿度の高くなる約半年】となっています。
暖候期とは少し違います。「暖候期」は【4月~9月】となっています。更に「暖候期予報」の予報対象期間は【3月~8月】です。混同しないようにしましょう。
各アラートの発表基準
アラートの発表基準は【暑さ指数】という指標を採用しています。
暑さ指数…気温、湿度、輻射熱(日差し等)、風等からなる熱中症の危険性を示す指標。
気象庁HP:https://www.jma.go.jp/jma/press/2404/16a/20240416_press_heatalert.html
【その日の暑さ指数の最高値が33以上と予測された場合】に【熱中症警戒アラート】が発表され、【その日の暑さ指数の最高値が35以上と予測された場合】に【熱中症特別警戒アラート】が発表されるようです。
なお【暑さ指数】の指標の指針等に関しては環境省のHPに詳細が載っています。以下にスクショ画とそのページへのリンクを載せておきます。
上記画像の元ページ→https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
発表区域区分
警報や予報は【一次細分区域】や【二次細分区域】といったように、その予報・警報の特徴に応じてそれぞれ【発表区域】が定められています。【熱中症警戒アラート】と【熱中症特別警戒アラート】では【発表区域】がやや異なるので分けてまとめます。
【熱中症警戒アラート】の発表区域
今回の【熱中症警戒アラート】は【全国を58に分けた府県予報区等】で区分して発表されるとされています。
そして、その対象地域内にいくつかある【暑さ指数の算出地点】で【暑さ指数の予測値が33以上】となった場合に発表となるようです。
概ね【府県予報区】と変わりません。環境省と気象庁のHPを見比べると【天気予報】では【北海道:釧路・根室・十勝地方】と纏められる地域が【本アラート】では【釧路・根室地方】と【十勝地方】に分けられており、また【天気予報】では【鹿児島県】は一つの予報区となっていますが【本アラート】では【鹿児島本島】と【奄美地方】の2つに分けられたようです。
【熱中症特別警戒アラート】の発表区域
対して【熱中症特別警戒アラート】は【過去に例のない広域的な危険な暑さを想定】して運用開始となったと上述したように【都道府県内すべての暑さ指数算出地点】で【暑さ指数の予測値が35以上】である場合に発表されることになっています。
2024年4月26日現在では、まだ【熱中症特別警戒アラート】の発表がないため、不確定な部分がありますが、資料から読み取れる内容としてはこんな感じです。
発表時間
発表の時間とタイミングも【熱中症警戒アラート】と【熱中症特別警戒アラート】で異なるようです。
【熱中症警戒アラート】の発表時間
【前日午後5時】と【当日午前5時】が【熱中症警戒アラート】の発表時間となっています。
【前日の夕方の段階で『明日は暑さ指数が31以上になりそう』と予測された場合】or【当日の早朝の段階で『今日は暑さ指数が31以上になりそう』と予測された場合】に発表という認識でよいでしょう。
【熱中症特別警戒アラート】の発表時間
【前日午前10時ごろ】のデータから【熱中症特別警戒アラート】の発表基準に達すると予想された場合に、その4時間後の【午後2時ごろ】に発表となるようです。
【熱中症警戒アラート】よりも危険度の高い状況のため【より早い段階】で警戒を促していると考えればOKです。
参考資料
ここまでの情報の参考資料の画像を貼っておきます。
ここまでが概要となります。以降では【気になる点】と【気象予報士試験への影響】に関してまとめていきます。
クーリングシェルターとは?
別名【指定暑熱避難施設】
【クーリングシェルター】とは一言でいうと【各地方自治体が地域住民の熱中症予防のために冷房の効いた涼しい施設を開放しよう】という試みのことを指しています。
児童の防犯対策として【子供110番の家】というステッカーが貼られたお店などをみたことないでしょうか?それを熱中症対策に置き換えたもののようなイメージですね。
対象となるのは民間施設や公共施設など
各地方自治体が、各自治体のもつ民間施設や公共施設などを「クーリングシェルター」として指定する運動が進んでいるようです。
酷暑で有名な埼玉県熊谷市では、市内の約20の施設を「クーリングシェルター」として指定する予定だそうです。
WEBサイト上で対象施設を順次公開予定
住民が対象施設にアクセスしやすくなるように、各施設の情報を収集し公開していくようです。
情報が整ってくればネットで地域の対象施設を確認できるようになるようです。
クーリングシェルターマークと専用ロゴ
対象施設かどうか一目で分かるように【クーリングシェルターマーク】と【専用のロゴ】の運用も始まっていくようです。
実際のマークはコチラです。
これはあくまでベースであり「施設によっては色を付けたり」してもよいみたいです。この夏、最寄りの施設にこのマークがないか探してみてください。
ここまでがクーリングシェルターの概要です。最後に気象予報士試験への影響に関して考察していこうと思います。
気象予報士試験への影響
最後に【熱中症警戒アラート/熱中症特別警戒アラート】運用開始における気象予報士試験への影響を考えていきます。
熱中症警戒アラートの出題可能性
2024年度の第62回・第63回試験での出題可能性高そう。
気象予報士試験では、制度変更や技術革新などのいわゆる【時事ネタ】は運用開始後すぐに出題されることはあまりありません。
早くても1年後〜2年後ぐらいが一般的です。
しかし【熱中症警戒アラート】の方は実は令和3年度からすでに運用が始まっているため、こちらに関しては出題されてもおかしくないと思います。
【熱中症警戒アラート】は2020年度より前は【高温注意情報】として運用されていましたが、2020年度より名称が変わったようです。
特に今年度(令和6年度)は、本記事で紹介した【熱中症特別警戒アラートの運用開始】や【各地気象台での目視観測終了】などの時事ネタが豊富なため、熱中症警戒アラートに関しては出題の見込みが高いと思います。
各地気象台での目視観測の終了に関しては、別記事で紹介しています。気になる方は以下のリンクをチェックしてみてください。
目視観測の終了に関する記事はこちら
熱中症特別警戒アラートも第62回第63回試験でまとめて出題されるかも
一般的には、今年度から運用開始となった【熱中症特別警戒アラート】が次回やその次の試験である第62回試験や第63回試験ですぐに出題されるとは考えにくいのですが、今回に関しては数年前から運用が開始している【熱中症警戒アラート】や【高温注意情報】などと関連した制度となっているので、それらの知識と絡めて出題される可能性がゼロではありません。
なので、直近の試験を受験予定の方もそれらの関連知識と一緒にそれぞれの制度や情報の特徴や違いを区別して暗記しておくほうが安心だと思われます。
熱中症警戒アラート/特別警戒アラートの出題のされ方
一般知識試験
一般知識試験ではあまり出題の可能性はなさそうです。
一般知識で出題されるとすれば、熱力学の計算問題などで【暑さ指数】を計算させるような問題が考えられます。
と言っても暑さ指数自体は、気象予報士試験においては学習優先度の低い指標となるので、出題される場合は問題文にきちんと【暑さ指数の求め方の手順や公式】などが与えられた上での計算になるはずです。
【一般知識試験】においてはそれほど意識する必要はないと思います。
専門知識試験
最も出題の可能性が高いのは専門知識試験でしょう。
ここでは【熱中症警戒アラート/熱中症特別警戒アラート】の制度や目的、運用方法や特徴、仕組み、それぞれの違いなどが出題される可能性が高いです。
【高温注意情報】などと絡めた出題も予想されます、しっかり各制度を区別して暗記していきましょう。
また、災害・防災周りの知識として出題される可能性もあります。クーリングシェルターやクーリングシェルターマークなどが活用されていることなども頭に入れておきましょう。
実技試験
試験科目3科目のうち2番目に出題可能性が高いのが実技試験です。
出題のされ方としては、【暑さ指数の導出の仕方】がヒントとして問題文中で提示された上で【エマグラムや天気図、気温・湿度の時系列図など】から計算に必要な物理量を割り出し【暑さ指数を導く】といった、おまけ程度の計算問題での出題が考えられます。
もしくは、災害・防災関連の問題でいくつかの地域のデータが与えられ【それぞれの地域で発表すべきアラートは何か正しいものを選択する】と言った出題もありえそうです。
ただ、いずれにしても、問題文中で「暑さ指数の計算方法」や「アラート発表の暑さ指数の基準値」と言った前提知識はヒントとして与えられることになると思うので「知識をインプットして点を獲る問題」ではなく「与えられた情報からアウトプットで正解を導出する問題」になるので、これらのアラートに関する知識量を増やす対策よりも対応力を伸ばす実践対策が必要です。
数年後の試験の出題可能性は十分ありえる
本アラートの運用が開始されてから数年後以降の試験では、他の試験範囲の内容と同じように出題されるはずです。
直近試験での受験予定がない受験生はいつ出題されてもいいように、今のうちからどんな制度か定期的に確認しておきましょう。
以上となります。受験生も非受験生もしっかり概要を理解して、熱中症から自身や大切な方を守れるようにしましょう!